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 住みよい民家再生のための工夫として、特徴的な町並みの景観を保ちながら、地域的な面からの生活環境を向上していく再生の提案が必要ではないでしょうか。
 歴史ある町並みの連続性を持つことが、その土地特有の美しい情景を残すこのに繋がります。また、狭い路地では、辻的空間(コモンスペース)などを設けることが交通、防犯や防災、コミュニティといった面から地域に役立ちます。誰もが美しいと思える伝統ある風景を創ること、個人のライフスタイルを満足させることの両立が、より魅力的な民家再生につながるとともに、次の世代へ継承するポイントになると思います。
 そのためにも、民家における外構(庭、塀、生垣、門)のあり方やデザインが、とても大切になってきます。

歴史ある町並みを次世代へ繋ぐ

 茨城県つくば市北太田での民家再生における外構の事例を紹介します。この地域は、東へ約1.5キロメートルほどの場所に建つ小田城(国指定史跡)の出城があった歴史ある集落です。現在も写真のように、よく手入れされた庭と黒壁の塀や建物が残り、当時を偲ばせる独特な風景が作られています。しかし、近年はハウスメーカーの家が徐々に増え、毎年少しずつ歯抜け状態になってきています。

連続する黒板壁の町並み

 江戸後期に建てられたF邸はその集落の入口付近(角地で隣が鎮守の杜)に位置する築160年の古民家です。これを4世代8人が暮らす家へと再生することになり設計を依頼されました。この事例では、茨城県の伝統的建築技術の継承と、鎌倉時代からの歴史を持つ集落の伝統的意匠を踏襲し、建物の外壁(下見板張りの黒壁)に併せて、全長40mの道路の境界沿いに黒塗りの板塀を作りました。また、敷地内に建つ蔵の壁も今回の工事で併せて黒板壁で統一しました。板塀のディテールは、周辺の古い塀をモチーフに通風や防犯の工夫を施し、モダンさも取り入れたデザインとしました。
 また、できるだけ集落の景観(原風景)の連続性を図ることを考え、板塀は時代的な差のある二つのデザインを取り入れました。この集落はかつて水害にたびたび見舞われた場所なので、改良が繰り返されていたように思いました。
 ひとつは(こちらが古いように思います)御影石を支柱にして、貫を通しそこへ杉板を互い違いに縦張りしたもの(北側)、もうひとつは檜材を柱に欄間と屋根を設けたデザイン(東側)。また、東側の一部は四つ目垣に植栽としました。4つ目垣は建築主のアイデアによるものでしたが、ともすると黒一色で圧迫感を感じる町並みに、ほっと一息といった感じで全体的に心地よい雰囲気になりました。また、室内から見ると東側の部屋の通風・採光がよくなり、鎮守の杜も借景できるようになりました。

板塀が特徴的な集落内の町並み

F邸の東側、欄間付板塀、四つ目垣に植栽

北側は御影石の支柱と杉板塀

土の舗装で辻的な空間へ

 次は、つくば市小田(城下)に昭和5年に建てられたK邸の事例です。敷地は開口が狭く奥に長く、城下町特有の狭くクランクの多い路地の角地にあります。敷地には手前から門、主屋、離れ、土蔵がほぼ直線上に建っています。依頼を受け、主屋と離れ、明治初頭に建てられた土蔵を同時に再生し、併せて駐車スペースや庭、アプローチなどの外構工事を行いました。
 かつては物置だった場所を駐車スペースへと計画しました。路盤はアスファルトではなく地元の土を使った舗装としました。また、乗り入れ部分は強度とデザインの両面から、素材を変えて御影石(礎石の再利用)と、主屋の土間の三和土と同じ風合いのコンクリート洗い出し仕上げにしました。
 土の舗装は、真夏でも表面温度が上がらず、アスファルトのような照り返しや石油系の匂いもありません。また、雨水の透水性も高く、美観的にも周囲の素朴な風景と調和するなど、土はとても良い材料です。
 駐車スペースは塀や柵は設けずに、周辺に対して開いた辻的な空間としました。オープンな空間としたことで、狭い路地に光が差し、風が通り抜けるようになりました。  竹や植栽の緑が美しく、コモンスペース的な空間は、近所の人たちが立ち寄って、ちょっとお喋りをしたり、登下校の小学生たちがちょっと寄り道して遊んだりと、地域の交流の場所になることと思います。
 また、狭い路地では車がすれ違う際の待避所や回転スペース、緊急車両の出入りが可能になるなど、交通の面や防犯、防災にも役立つと思います。

外側はコンクリート洗い出し仕上げ、内側は茨城県産の真砂土を使用した土の舗装。乗り入れ部分は礎石の再利用した御影石

門より入って正面に主屋を見る。手前右側に主屋と平行にヒンプンが見え、その奥に駐車スペース(辻的な空間)がある

版築でつくったヒンプン

 辻的な空間を抜けて土間へと続くアプローチの手前に、版築(はんちく)の技法を用いてヒンプンなるものを作りました。琉球建築の民家における典型的な様式のヒンプンは本来、門と玄関の間にあって、直接玄関が見えないための目隠しの意味や、男女が左右別々に分かれて入る、また魔除け等の意味があるそうです。
 ここでは辻を抜けるとヒンプンに当たり、右へ曲がると土間(玄関)へ、左に曲がると門に向かうという役割を持っています。版築の壁は土とにがりと石灰といった素朴な素材を用いた、古い左官技術によるものですが、狭く閉鎖的な路地空間の中に、辻的な開かれた空間の正面に位置することもあり、この家のシンボル的な存在となりました。また、これによって門からのアプローチと、辻からのアプローチを明快に分けることができ、人の動きがとても美しく見える効果があります。

 特に地方において、住みよい民家の外構には、集落全体を俯瞰したプラン作りが大切です。デザインや色、素材についてはいかに集落との景観的な整合性が取れているか、バランスよく確認すること、そうしたうえで快適性や社会的な面(防犯や災害時の対応)が機能していることが必要だと思います。

駐車スペースのコーナーに町並みの連続性のためのに黒板塀を設け、その袖に四つ目垣を設けて主屋と緩やかに仕切っています。

版築:型枠を作り、そこへ練った土を10~20㎝の厚さで入れ、繰り返し突き棒で固めます。顔料を土に混ぜることで縞模様の層ができます。

古民家再生コラム
写真 風景と暮らしを繋ぐ外構デザイン

歴史ある街並みの連続性を持つことが、その土地特有の美しい情景を残すことに繋がります。個人のライフスタイルを満足させること、誰もが美しいと思える伝統ある風景を創ることの両立が、より魅力的な民家再生つながるとともに、次世代へ継承するポイントになると思います。

写真 「茨城の古民家再生展」終了し、思うこと

東日本大震災を乗り越えて建つ、大切な地域の資源である古民家を、次世代へと住み繋いで行くことの重要性やその意義を、これまでの事例を基に多くの方々に知っていただき、古民家を1軒でも多く残したい、茨城の美し原風景を残したいという思いから展覧会を行いました。

写真 「茨城の古民家再生展」終了し、思うこと

古民家を次の世代へと繋ぐことは、歴史ある町並みを繋ぐこととなり、これからの豊かな地域づくりにとても大切なことです。古民家の魅力を感じつつ、家族3人が思い思いにすごせる居場所づくりを大切なテーマに再生を行いました。