明治8年(1875年)に建てられ、明治・大正・昭和・平成・令和と、145年間にわたり住まわれてきました。今から55年ほど前に当初の茅葺屋根から瓦屋根に改修され、あわせて入母屋屋根の玄関が設けられ今日に至っています。主要構造の欅や松、杉は大きな木材が使用され、仕口や継ぎ手に高度な技術が施された堅牢かつ威風堂々とした構えが特徴的です。
今回の再生では、北側に増築された部分を解体して創建時の姿へ戻し、また主要な構造材と大きな部屋割りは残しつつ、耐震性、機能性、バリアフリー、収納計画の考え方を取り入れ、部屋の用途や水廻りの位置を大きく替えました。古い建具や仏壇・神棚も、すべて一度取り外して建具屋さんに修理して頂き再利用しました。
家族以外にも、様々な人の集まる機会が多い事から、それまでの土間を、居間へと繋がるホテルのラウンジ(天井には大きな梁がかかる)のような設えとし、仕切りの建具を開けると20畳を超える広い部屋になり、併せて空間の雰囲気も大きく変化します。暗く風通しのわるかった室内は、新たに設けた中廊下のトップライトから光が入り、通風も計画的に取り入れました。
室内の色調は古材・白壁・大谷石というシンプルな素材でまとめ、落ち着きと明るさ、古いものと新しいものとのバランスをはかりました。
今回の工事では、気候変動によるゲリラ豪雨や地震等の災害対策として、治水工事や土留め工事等の建物周辺にも及びました。揚屋工事からはじまり一年に及ぶ難度の高い仕事でしたが、施主の理解のもと、大工さんはじめ多くの伝統建築技術の職人さん、またそれをまとめてくれた現場監督さんに支えられて完成にいたりました。これから50年さらに100年と住み繋いで欲しいと思います。


