古民家の時代に応える活用法
敷地は阿見町の古くからの集落内に位置します。施主はそこで江戸末期頃に建てられた茅葺民家に住まわれていました。そして、茅葺民家の調査依頼を受けたことから計画がスタートしました。
調査をすると太い欅の大黒柱や、チョウナがけの丸太梁など立派な材料でしたが、建物は不動沈下で大きく傾き建具も開かない状態でした。加えて建物裏側が傾斜地であり、自然災害の危険性のあることが分り、再生の検討もしましたが、総合的に判断した結果、同集落内の別の場所へ移して新築することになりました。そして、一部に古材と、古建具を再利用することで、新しい中に伝統と懐かしい表情が漂う、時代を超えた佇まいとなるデザインを提案しました。
地域にあったこれからの暮らし方
深い軒、縁側、風の通り道、可変性のある間取り等、時代が変わっても地域の気候に合った、自然な暮らし方を実現できるよう伝統的な機能性を取り入れました。
長い年月を経て黒く輝く大黒柱は、生活の中心であるリビングルームの一角に鎮座しました。慣れ親しんだ家の雰囲気を少しでも感じていただけるように、モダンな空間の一角に古建具やスス竹を取り入れ、新旧の異なる素材感が豊かな表情となるようコーディネイトしました。
プランは広縁・茶の間・キッチンを建物の中央に配し、建具の開閉によって空間が変化します。季節の変化や使い方によって、部屋の大きさをスライドできます。また、同居する高齢のお母様もスムーズに生活できるよう、シンプルな動線計画と建具は全て引き戸としました。
地産地消による自然素材の家作り
使用したほとんどの木材は茨城県産とし、構造材に桧・杉、床材に桧材、壁・天井には珪藻土塗りと、杉板を張りました。自然素材によって室内には自然な空気が流れます。新しいものと時を経た異なるものが一体となり、共に新たな100年、200年を紡いでいきます。