施主のご自宅の一角にあり、しばらくの間使われていなかった店舗分部を改修し、十割蕎麦を出す小さな蕎麦屋を作ってほしいとの依頼を受けました。
先ず外に並んでいた自動販売機やパラペット看板等を撤去し、内部は柱・梁のみ残してスケルトン状態まで解体しました。店主のこだわりが、お店の内外から感じられる様、「和」の佇まいを感じるデザインを意識しました。
外観は、建物形式が妻入りであることから、切妻屋根の妻面を使い端正な表情の蔵造りの意匠としました。この地域の蔵を参考に腰壁は下見板張り、上部は白壁、窓の外に親子格子、また小さいながらも土庇を設け、お客様が自然に店内へと導かれるような雰囲気を意識しました。
店内は14席ほどの小さなお店ですが、十割蕎麦の持つ繊細さな風味と、店主の本物へのこだわりを表現しつつ、如何にお客さまに寛いでいただけるかを考えました。
三和土(たたき)、珪藻土、十和田石、杉板、磨き丸太、松太鼓梁、家具にナラ材など、様々な素朴ながら質感豊かな和の自然素材を選択しました。
蕎麦を味わいながら、心地よい素材感を肌で感じ、また来店する度に自然の経年変化を感じて楽しんで頂けるよう、現場を確かめながら、各素材の場所や細部のおさまりを決定しました。
