認定こども園大野ひかり保育園は、霞ヶ浦の北浦のほとりにあります。保育所から認定こども園への変更や園児の増員にともない、園舎の増築の設計のご依頼をうけました。現地に伺うと北浦を望むのどかな田園風景の中に、広々とした園庭と大きい屋根が特徴の既存園舎が出迎えてくれました。この広い園庭では秋に大規模な運動会や、園名物の和太鼓の演奏が披露され、多くの人が訪れるということでした。
既存建物との融合と帆引舟をイメージしたデザイン
先生方と打ち合わせを重ねていき、設計の方向性が定まりました。既存の園舎をいかすこと、運動会が従来通り行えるよう、グラウンドの広さを確保すること。新園舎のグラウンド側には大きな掃出し窓を設けて、室内からも観覧ができるようにすることなどです。
既存園舎と調和のとれたデザインと、また既存の保育室に影がおちないよう、新しい園舎の配置や形状を検討を重ねました。園長先生のアイデアと融合し、帆引き船のイメージが形となって表れてきました。
地域産木材と自然素材による園舎づくり
園長先生には私の園舎に対する姿勢に共感していただき、構造は迷わず木造(軸組工法)とし、構造材および仕上げ材ともに茨城県産木材にこだわりました。
一階は保育室ゾーンと厨房部分にわかれ、二階は先生方の休憩室や理事長室など管理ゾーンとしました。既存園舎とはウッドデッキで結び、裸足で行き来ができます。
四室ある保育室は大黒柱を中心として建具で間仕切られています。建具を外せば大空間としても使うことができます。二階部分の障子をあけると、南側からのぼる勾配天井でつながれた保育室を見渡すことができ、子供たちの様子がわかります。子供たちの手で触れる部分は自然素材を使用しました。二本の大黒柱は無垢の木曽檜、床も無垢の桧のフローリングです。天井は珪藻土、壁には八溝杉の腰壁と珪藻土を用いました。
木の香りとともに、こども園で過ごした日々をふと懐かしく思い出すような、子供たちの五感による記憶がこれからの人生の手助けとなることを願っています。