無限大の可能性
「きのこ棟」は森の中に佇む、こどもの城(いえ)をイメージしました。間取りは八角形の保育室が横に二つ並んでいて、無限大の記号(∞)をモチーフにしています。この保育園は母体である真言宗のお寺の境内からスタートし、現在も保育の一環として仏教の教え取り入れています。八の字は仏教とかかわりの深い数字であることと、また∞はこども達の無限の可能性を表現しています。
屋根のかかった正面の大きなウッドデッキは、森(自然)との一体感を高め、晴れた日はもちろんのこと、雨の日でも外へ出ることができます。こども達はまるで森の中で生活しているように、より自然を五感で感じることができ、遊びながらにして感性や冒険心を高め、情操豊かに成長することでしょう。また、この大きなデッキテラスは、きのこ棟と既存園舎とをつなぐ外部廊下の機能もあり、大きな船のデッキのような役割を果たしています。
健康な建築で健康な子どもを育てる
建物の外観は名前の通り、森の中にある大きなきのこをモチーフにデザインしました。建物のてっぺんにある窓からは、太陽の光が保育室の中へさんさんと降りそそぎます。建物の内外には地域産の天然木材(桧、杉等)をふんだんに使いました。木の床は温かく柔らかいので、飛びはねたり寝ころんでも安心です。木の壁は走ってぶつかってもコンクリートの様に硬くないので大丈夫です。木はこども達の心と身体の成長にとても優れた材料なのです。このような自然に溢れた豊かな環境で、子供たちが活き活きと元気に育ってくれることを願っています。
認定こども園・大野めぐみ保育園 園長 中西 三千子
無限大の可能性を育む園舎
「きのこ棟って三階建て?」今年卒園した学童さんが出来上がったきのこ棟を外から見て、私に発した言葉。「そうかもね。じゃあ中入って見てごらん。」きのこ棟の見学を終えると「園長先生、三階と二階が一階とつながってた。」と驚きの声。子どもってなんて素敵なのだろうと感じさせられた喜びの一瞬でした。
そんな素敵な子どもの声を発せられる園舎を設計してくれた吉田先生と出会ったのは、保育園に送られてきた吉田建築計画事務所からの一冊のパンフレットからでした。「こんな木のぬくもりのある園舎いいな」と拝見していた頃、認定こども園・定員増に向け施設整備の計画が持ち上がり、吉田先生にお願いすることになりました。
当園は昭和三十三年「ありがとうございます・ごめんなさいを素直に言えるこども」を保育信条として、慈眼寺の境内地に開設。平成七年には、松・クヌギ・山つつじの森を切り開いて移転改築。増築園舎は森を残しながら、子どもたちがのびのび生活できる園舎を作りたいと思いました。
吉田先生が提案してくださったのは、八角形の部屋が二つつながっている形、しかも吹き抜けで新鮮でした。完成予想図は、理事長が「どこのペンションの写真?」と見間違えるほどモダンでした。
来園してくださる方の為に、大人専用トイレ棟も作りました。大屋根が二つ・子屋根が一つ並び、お父さんお母さん子どものきのこが立っているような外観であった為「きのこ棟」という名称にしました。
建設中は様々な工事車両に子どもたちは興味津々で、上棟式も盛大に子どもたちや地域の方と楽しめました。
数字の八は横にすると無限大、これまでの慈眼福祉会の思いを吉田先生は見事に園舎に表現してくださいました。園舎に入った年長さんは「すごく広いんだよ・音が響くんだよ・屋根が高いよ」とお家の方に自慢しています。
きのこの胞子がなければ森は育たないと聞きました。「子どもたちが地域を育んでいく」そんなことに思いをはせながらきのこ棟を大切に使っていきたいと思います。