立地と環境
野草舎森の家は、北浦と鹿島灘の間にある緑豊かな鹿島台地に位置し、敷地東側の道路は、南へ1.5kmほどにある東国随一の古社である鹿島神宮へと続く古道であり、太古の昔から豊かな自然環境のもとで、人々の暮らしが続いてきたそのような場所に計画されました。
現地に立つと平坦で広大な敷地が広がり、その奥には森が広がる生命力にあふれた環境でした。この場所はこれまでも、子供たちの農業体験の場やピクニックなど、自然と触れあう「森の広場」として使われて来ました。20年ほど前に園長先生が植えられた4本の欅の木が、大樹となり敷地の真ん中に大きな影をつくっていました。
園長先生の思い
今から35年ほど前に、子どもの家・野草舎(保育園)を始めたときに、野草舎という名前を付けたのは、魯迅の「野草」という短編集の冒頭にある「野草はその根深からず、花と葉美しからず、しかも露を吸い、水を吸い…」という文章に感銘を受けたからである。子供たち一人ひとりのありのままの姿を認め合うような思いがあった。(関沢園長共著”いのちを育てるこころを育てる”の文中より)
自然と共に生きる家
園舎の設計にあたり、園長先生から保育園の名前について、最初に建てた「子どもの家・野草舎」と同様に、野草舎を入れた「野草舎・森の家」としたいとのお話がありました。
その思いを園舎として実現するために、乳児期・幼児期の子どもたちが、五感を通じて自然と触れ合い共に生きることを実感し、様々な体験や経験を重ねる中で創造性豊かに成長していく、そのような園舎づくりを目指して3つのテーマを柱に設計にとり組みました。
① 子供の健康を第一に考えて温かみのある木造の園舎とし、可能な限り無垢材や自然素材を用いた手仕事の見える建築とし、また地産地消および本物に触れるという意味から、茨城県産の木材を積極的に活用する。
② 自然の陽の光や風をふんだんに取り入れた、地域の気候や暮らし方など、土地の風土と調和した空間で、子供たちが生き生きと日々を過ごせるシンプルな建物とする。
③ 園舎・園庭が周囲の森の木々と調和した関係性を形成し、その一体的景観が子供たちの原風景として、未来に向かう心に刻まれるような場所とすること。
