「子供たちの原風景として」
幼保連携型認定こども園“めぶきの森”(旧妙義保育園 1981年創立)は、豊かな自然環境に恵まれた緩やかな丘陵地に計画されました。世界遺産の富岡製糸場から南西へ数キロの場所で、敷地の西側に妙義山を仰ぐ風光明媚な場所で、その麓には今では古民家となった養蚕農家の家々が点在し、独特な建築様式とその情景は、かつての地域の暮らしと歴史を物語っています。こうした素晴らしい環境が子供たちの原風景となる事を創造しながら計画しました。
「園からのご要望」
〇園の理念である「子供は自然の中で育つ」を貫ける園をテーマとしたい。
〇群馬県で一番の保育園にしたい。
〇園児たちが地域の歴史や伝統を意識出来るようにしたい。
〇建物は木造とし構造材、造作材、家具材などへ地域産木材を使用したい。
〇華美でなく機能的な園舎にしたい。
「地域の資源の活用」
私は設計に当たり、地域の気候風土にあった園舎としたいと思い、妙義山麓の集落を巡り伝統建築の間取りや構造・意匠、配置などを調査しました。
周囲の景観に馴染むプロポーションにとの考えから、敷地南から北に向って緩やかに下る傾斜地(高低差≒2m)の地形を活かし、建物の床レベルを3層に分けて、地形と合わせたスキップフロア―としました。
建物形状は、サンプリングした伝統建築をモチーフに大きな切妻屋根とし、屋根瓦には、かつてこの地方で製造されていた十能瓦を復元して使用、壁は焼杉と石蔵を踏襲しました。また世界遺産であり富岡市のシンボルである“富岡製糸場”において、日本で初めて採用された洋トラスを取り入れ、この園舎のデザイン的特徴の一つとしました。
「自然を感じ共に育つ生活」
風が通り、陽の温もりを感じる、縁側や土間といった日本民家の空間要素を現代建築として活用しました。縁側(デッキテラス)は平面構成の大きな特徴で、各室間を連続させ、県産材ヒノキの床、珪藻土の壁、杉の建具・家具など子供たちは自然素材の中で生活します。
日常生活において、内部と外部を幾度も往来し、周囲の自然環境と触れ合いながら、年齢に応じた様々な体験・経験のできる環境づくりに配慮しました。
食育の観点から、調理室は玄関入って直ぐの遊戯室に面して設け、子どもたちと調理の先生方がお互い顔の見える配置としました。
CASE 11(木造園舎)
幼保連携型認定こども園 めぶきの森 木造2階建 新築工事 群馬県富岡市 2018
幼保連携型認定こども園 めぶきの森 園長 矢野勅仁
「つくるなら木造園舎」
これは老朽化が進みつつあったこども園の建て替えを初めて意識した時に、絶対に譲れない条件として私が考えたものでした。自然の光が差し込み、風が流れ、木の温もりと香りが感じられる園舎こそ、「子どもは自然の中で育つ」という教育保育理念を掲げた私どもにとって理想の園舎なのです。
設計事務所の選定は木造園舎設計実績のある事務所のネット検索から始まり、複数の候補の中から吉田建築計画事務所に決めさせて頂きました。群馬県とは縁が無かった吉田さんですが、基本設計の前には富岡市や旧妙義町の歴史を学んだり、建設予定地や農村の風景をデッサンしたり、世界遺産である富岡製糸場を見学したりと、とにかく真面目で精力的な方でした。
田園地方都市にマッチした外観は地場産業を支えた養蚕農家のようで、正面エントランスの大谷石は昔ながらの蔵を連想させています。いい意味でこども園らしからぬ佇まいは、以前からそこに建っていたような感覚さえ覚えます。天井高7.5メートルの開放的な遊戯室の空間は富岡製糸場で使われているトラス構造で支えられ、国産ヒノキの床と珪藻土の壁、オーダーの木製家具、そして広々としたウッドデッキテラスは理想とした園舎そのものでした。
少子化や核家族化そして人口減少が進む中で、こども園が担うべき役割と果たすべき責任を再確認し、建物に負けないように教育保育内容の更なる充実に努めて参ります。
所 在 |
群馬県 富岡市 | |
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敷地面積 |
2999.29 ㎡(907.29 坪) | |
建築面積 |
835.13 ㎡(252.63 坪) | |
延床面積 |
935.71 ㎡(283.05 坪) | |
構造・用途 |
木造平2階建て・幼保連携型認定こども園 | |
竣 工 |
2018年 3月 | |
設 計 |
㈲吉田建築計画事務所 | |
担 当 |
吉田・石井 | |
リンク |
幼保連携型認定こども園 めぶきの森 ホームページ |