
大洗海岸に建つ明治二十一年創業の老舗宿「金波楼」が、昨年秋に名を「里海邸」と改め、常陸国のライフスタイルを楽しむ、「別荘風の宿」へと生まれ変わりました。
都市の日常に疲れている生活者が求めている「心地よい田舎」という価値を高めるために、周辺環境と共生を意識しながら、「田舎の心地よい素材感」を顕在化するデザインを施しました。
海を臨むテラスはミニマルなデザインで海の素材感を高め保養効果を高めています。ラウンジや室内には地域産材の無垢の木材を使い、また食材も産地ならではの新鮮さにこだわるなど素材感の持つ心地よさに魅了されます。
大浴場は、海側の大きな開口から、湯船が海と一体になっている様な景色が、訪れた方々の身も心も癒します。
室内は非日常的な海との接触を訴求しつつも、就寝と団欒を分けたレイアウトで、日常的な居心地へも配慮し、ゆったりとした時間と保養性を高めた設計としました。
大洗の古い地名を客室名にしました。「明神」「曲松」「巌船」「夏海」「袖ヶ浦」「船渡」「海門」「広浦」八つの客室は、それぞれに特徴があり、部屋ごとに違った雰囲気が楽しめます。

最上階のラウンジを出るとウッドデッキのテラスで、太平洋の水平線が望めます。
(上)多様なコンクリート打ち放しの壁は、岩の洞窟をイメージした待合、檜の階段を上がると(下)太平洋を一望できる、まるで桟敷の様な食事処へ続きます。逆に階段を下ると風情ある和室の食事処へとつながっています。
ひっそりとしたコンクリート打ち放しの廊下を歩いていくと、突き当りに大浴場が2つ現れます。
古社として知られる、大洗磯前神社の凛とした空間をイメージした「森林の湯」。神社の森から湧き出た水を毎日汲んでいます。
大洗海岸の引き潮の時に現れる磯の潮だまりをイメージした石づくりの風呂です。玄昌石や鉄平石、十和田石をふんだんに用いた洞窟のようなモノトーンの 空間に海と空の色が溶けてゆきます。
客室は寝室、リビング、バルコニーの3つのゾーンで構成しています。寝室は、ゆっくりと休めるように、海から離した位置へ配置。リビングには、ミニキッチンもあり別荘のようにスローに過ごせます。
(左)客室の大きなバルコニーで、潮風に吹かれながら「ゆったりとした時間」
を過ごせます。(右)客室内の半露天風呂。ゆったりとした檜の浴槽で、海を見ながらプライベ-トなひと時を過ごせます。
この地方の田舎の素朴な玄関をイメージしたエントランス。檜の外装は、柿渋で塗装しました。
海側からの全景。海を綺麗に見せるために、黒壁にしました。大きな庇やインナーバルコニーは真夏の日射を抑えてくれます。また、雨の日でも外へ出ることが可能です。