笠間市箱田は市の北西部に位置し、江戸時代中期に始まったとされる笠間焼発祥の地として知られ、里山にいだかれた名刹が残る歴史と自然豊かな場所。
施主のI氏より、「子供のころから慣れ親しんだ故郷の集落が、少しずつ古い民家が消え小学校も廃校となり、過疎化が進む光景を目の当たりにし、できれば実家の古民家を再生し、地域が魅力ある場所として見直されるようなライフスタイルを実現したい」との思いを伺いました。
そして明治時代後期に建てられた古民家を、4世代7人の暮らす新たな住まいとして設計がスタートしました。
間取りの原型は多室型整形6間取り、屋根は日本瓦葺き入母屋のせがい造り。約40年前に茅葺から現在の瓦葺へ葺き替えています。その際に寄棟造りから入母屋造りに改修をしています。
土間、座敷、大黒柱、板戸など過去の家族の歴史を大切に残しながら、親世帯と子世帯にそれぞれゾーン分けし2世帯住宅としました。かつての客間空間を中心にモダンなアイランドキッチン、北欧製の照明器具、最新の水廻りなど奥様が希望されたアイテムを取り入れた子世帯。また、農業を営んでいるご両親が気兼ねなく使える土間空間、90歳代のお婆様に配慮した水廻り、温熱環境の改善やバリフリー化などを組み入れた親世帯。家族それぞれが文化的で心地良く快適に暮らせるよう打ち合わせを重ねました。
また、外観は伝統的な意匠を継承し、漆喰壁と腰壁に目透の板張りを復元して、集落の風景と調和するデザインを訴求しました。
工事は現場代理人のもと伝統的建築技術(鳶、大工、建具、左官、板金、塗装等)の熟練した職人の技で、柱の入れ替えや床の間の移設、古材(天井、差し鴨居、柱、梁)の修繕、耐震改修、古建具の修繕など難易度の高い工事を、バラシ工事から完成に至るまで丁寧かつ迅速に進めて頂きました。
若い家族が古民家を再生し、地域ならではの豊かな環境での暮らしを実践する事で、少しずつその価値が広がり、次世代に向けて質の高い新たな集落形成へと繋がって行くことを願っています。
CASE 21
箱田の家 I邸 古民家再生 笠間市 2021
所 在 |
茨城県笠間市箱田 | |
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創 建 |
明治時代後期 | |
敷地面積 |
1332.72㎡(403.14坪) | |
建築面積 |
218.26㎡(66.02坪) | |
延床面積 |
198.20㎡(59.95坪) | |
構造・用途 |
木造平屋建て(伝統工法)・専用住宅 | |
工事種別 |
改修工事 | |
竣 工 |
2021年 12月 | |
設 計 |
㈲吉田建築計画事務所 | |
担 当 |
吉田・八木 |