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2023-10-26

鉄筋コンクリート造から木造(耐火建築物)の園舎へ

泉ヶ丘こども園は、JR常磐線の石岡駅前に立地する、創業から71年の幼保連携型認定こども園です。

 ・経緯 (園長先生から)「泉ヶ丘こども園は、RC造3階建ての園舎で44年間保育をしてきたが、環境問題や子供たちの健康を考え、鉄筋コンクリートの園舎から木造の園舎へ建替えを計画している、そこで木造の園舎に実績のある貴社へ相談したい」、とのお声掛けを頂き計画がスタートしました。

・法規制 課題となったのが、児童福祉法の規定にある2階以上に保育室がある場合は、耐火建築物(耐火構造:通常の火災が終了するまでの間、当該火災による建築物の倒壊および延焼を防止するために必要とされる耐火性能を有する壁・柱・床・その他建築物の構造にしなければならない。防火設備:延焼ラインにかかる壁に面する建具を防火設備とする)という要件でした。

・木造耐火建築物の設計  全国的にも純木造による耐火建築の保育園・こども園の事例はまだ少なく、弊社ではこれまで中大規模の木造準耐火建築物は、9軒の設計実績がございましたが、木造の耐火建築物は初めてでした。純木材の場合は告示の仕様規定が無い為、大臣認定工法の中から、燃えどまり型を採用し木造耐火建築物(60分)で設計を行いました。1階に遊戯室を配した為、大スパンが必要となり、木構造はKES工法(仕口・継手に金物をしようするハイブリッド型)を採用し、また構造材以外の床や造作材、建具、家具等にも茨城県産木材(杉・ヒノキ)使用し、トータルで240㎥の木材を使用しました。

・様々なメリット 木造にした事で、RC造に比べて建物重量が軽い為、基礎の構造が小さくなったこと、地盤が軟弱層の為、杭が必要となりましたが、杭のサイズ・数量・長さが小さくなるなど、建築コストの削減及び工期短縮にメリットがございました。また、壁の断熱性能に優れており外部からの熱の流入流出を40%~55%抑えることが出来る為、室内の温度変化が小さくなるので、冷暖房のランニングコストの節約が可能となりました。

開園後は保護者の方々から、「室内にはいると木造独特の温かみを感じる、木の香に癒されます。」といった声も聞かれ、また、遊戯室など大きな空間でも吸音効果が高い等、子どもが育つ場所としての環境にとても適していると事が分かります。

・中大規模建築物の木造化のすすめ また木造建築は、地域の伝統的職人技術(大工、建具、家具)の継承、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡を目指す「カーボンニュートラル」や、森林の持続可能な管理を実行項目の一つとする「SDGs」の観点からも、中大規模木造施設の建設が必要と言えます。これまでの木造建築は、戸建て住宅など、比較的小規模なものが主流でしたが近年、様々な法整備や技術革新によって、公共施設や商業施設などの中大規模建築物でも用いられるようになり、木造建築の可能性が広がっています。

また、地域の森の木々を建築に使うことで「人と人」「人と地域」「人と自然」がより良い繋がりへと進んでいく事を願っています。

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