toggle
2026-10-08

秋の大山崎山荘美術館を訪ねました。

10月2日、京都市のロームシアター京都で開催された建築士事務所協会の全国大会に参加してきました。

関東地方では雨の日が続いていましたが、この日の京都は気持ちのよい秋晴れ。式典が始まるまでの午前中、東山地区の清水坂から清水寺周辺を散策しました。しかし、想像以上の観光客の多さに、歩くだけでも疲れてしまうほどの賑わいでした。

翌日は電車で少し足を延ばし、以前から一度訪ねてみたいと思っていた「アサヒグループ大山崎山荘美術館」へ向かいました。

この美術館は、大正から昭和初期にかけて建設された「大山崎山荘」を創建当時の姿に修復し、建築家・安藤忠雄氏の設計による新館「地中の宝石箱」などを加え、1996年に開館したものです。

緑豊かな庭園の中に佇む山荘は、急勾配の屋根や煉瓦、木材などを組み合わせた重厚な外観が印象的です。周囲の自然に溶け込みながらも、建物そのものが確かな存在感を放っています。

本館の入口に近づくと、ふわりと甘い香りが漂ってきました。見上げると、大きなキンモクセイの木に小さな花がたくさん咲いていました。庭園の木々も少しずつ秋の彩りを深め、建築と自然が一体となった心地よい空間が広がっていました。

建物を見学して特に興味を引かれたのは、細部に施された意匠と素材の使い方です。

英国式建築の本館です。(登録有形文化財・建築物)

自然石や木材、煉瓦といった素材が、それぞれの質感を生かしながら調和し、長い年月を経て一層の味わいを深めているように思いました。

2階カフェの奥にあるテラスの意匠

テラス周りには、兵庫県加古川市付近で産出される龍山石(たつやまいし)が使用されており、柱礎に施された装飾模様にも、当時の職人たちの丁寧な仕事が感じられます。

2階カフェの奥にあるテラスからの眺め

2階のテラスは、木津、宇治、桂の三川を見渡せる壮大な風景をゆっくり眺めることが出来ます。

庭園では花の香りや鳥たちのさえずり、水のせせらぎなど、五感で季節の移ろいを楽しめます。早咲きの紅葉も見られました。池からの流れはやがて滝となり、斜面下の庭園にある大きな池に流れこみます。

安藤忠雄氏が設計した新館「地中の宝石箱」は、周囲の景観に配慮して半地下に設けられた円柱形の建築です。

コンクリート打ち放しによる現代的な空間は、歴史ある山荘とは対照的ですが、建築の大部分を地中に埋め込むことで、庭園の景観を損なわないよう計画されています。屋上には植栽や池が設けられ、建築と自然との関係が丁寧に考えられています。この展示室は、クロード・モネの《睡蓮》を展示するためにつくられた空間でもあります。

この日は、開館30周年記念の企画展「ジョルジュ・ルオー ―いつくしむまなざし、祈りの筆あと」も開催されており、美術作品とともに建築空間を楽しむことができました。

歴史的建築を単に保存するのではなく、その価値を尊重しながら新しい建築を加え、現代に生かしていく。

大山崎山荘美術館は、そんな建築の継承と再生のあり方を考えさせてくれる場所でした。

私自身、これまで数多くの古民家再生に携わってきましたが、古い建物が持つ時間の蓄積や素材の魅力を大切にしながら、新しい価値を生み出していくことの意義を、改めて感じる訪問となりました。

関連記事