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2026-04-27

幼児施設の設計コンセプト

子どもたちの「家」をつくりたい

これまで私は、保育園・こども園・幼稚園・児童発達支援施設といった幼児施設の設計に数多く携わってきました。しかし、その出発点は決して計画的なものではなく、一つの偶然の出会いにありました。

もともと私の設計活動の中心は、自然素材を活かした住宅でした。転機となったのは、ある保育園の園長先生から建て替えのご相談をいただいたことです。当時、私は保育施設の設計実績を持っておらず、専門性の観点からお断りすることも頭をよぎりました。ところが園長先生は、「私たちが求めているのは“施設”ではなく、子どもたちにとっての“家”です。これまで住宅で実践されてきたように考えていただければ十分です」と語ってくださいました。

この言葉は、私にとって大きな学びとなりました。保育園と住宅は用途こそ異なるものの、「人が安心して居場所を感じる空間をつくる」という本質において深く通底している——その事実に気づかされたのです。

以来、私が手がける幼児施設の設計は、一貫して「住宅の延長」として捉えています。スケールや機能を満たすだけでなく、一人ひとりの存在が丁寧に受け止められる場であること。そして子どもたち自身が「ここが自分の帰る場所だ」と感じられる環境であることを重視しています。

とりわけ幼少期は、人格形成の基盤となる極めて重要な時間です。その時間を包み込む建築は、単なる器ではなく、記憶と感情に寄り添い続ける存在であるべきだと考えています。将来、子どもたちが成長したときにふと立ち返ることのできる原風景となり、人生の支えとなる——そのような建築を実現することが、私の設計における根底的な思想です。

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家庭的な雰囲気。 子ども達の使い勝手に配慮した木製の手作り家具、保育園の中に我が家のようなスケール感や素材感を用いることで、子どもたちが一日過ごす環境として、安心感や落ち着きを与え、楽しく快適に過ごすことにつながります。

胸を張って安全といえるものだけ

園舎には、自然の素材を用いたい。そこには、私の過去の悔しい経験と強い想いがあります。建築士として仕事をはじめたのは、バブル経済の真っただ中。建築ラッシュが続く中で建築業界も工期短縮が求められ、安価で使い勝手の良い化学物質が、建材や塗料等に使われていた時代でした。しかし一方、それらの人体への影響についての検証は不十分なまま。私自身、現場で気分が悪くなることもあったほどでした。やがて建材の有害物質に関して国の基準が定められましたが、建築が人に害を与えていたというのはとてもショッキングな出来事でした。それから見直したのが、自然素材。やはり昔からの木造の建物だと、人に優しい建築です。国内外の研究からも、自然の素材のなかで人はストレスを発散しやすいということが科学的に証明されています。子どもたちが毎日多くの時間を過ごす園舎には、安心・安全だと胸を張っていえる素材だけを使う。これは変わらない信念です。

子どものために、大人の声を聞く

園舎は誰のものでしょうか。その答えは、ひとつではありません。園舎というと、子ども中心に考えることは当然ですが、一方で園長先生をはじめとした経営者、保育士、栄養士、保護者、そして地域の方々など、多くの大人が関わっています。だからこそ、園舎づくりには、子どもはもちろん、さまざまな大人の視点まで広く取り入れるべきだと思っています。なかでも大切にしたいと考えているのが、現場で働く先生たちの視点。子どもたちに一番近くで接する大人だからこそ、保育士さんたちにはいつも心身ともに健康でいていただくことが欠かせません。そのため、園舎設計の打ち合わせを行なう際は、保育の大きな方針を決める園長先生はもちろん、現場の保育士さんたちにもできるだけ参加していただくようにしています。たとえば、「事務作業の間も、子どもたちの様子が見えるとうれしい」という声から、部屋を区切らず見通しの良い間取りを工夫したり、「0歳児を預かるときは一瞬も目が離せなくて、精神的なプレッシャーが大きい」という声から、あえて子どもたちから少し離れて一人になれるスペースをつくったりすることも。現場の声をしっかり聞くことが、結果的に子どもたちにとって良い環境をつくるための近道なのだと思っています。

ホールの一角に設けたカフェスペース(茨城県水戸市 わかな保育園)

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5歳児室と遊戯室が繋がっています。建具を閉じると独立した部屋に、開くと大きな空間となり多目的に活用できます。床材は県産材の桧です。(茨城県ひたちなか市 はなのわ保育園)

地域から愛され、長く残るものを

近年は、環境保護の意識を育てるといった観点からも木造の園舎へのニーズが高まってきました。とはいえ、どんな考え方でどう建てるかで意味合いは大きく変わります。私がこだわるのは、できる限り地元の資源を活かすこと。古くからの日本の住宅の考えを取り入れています。もともと日本の建築は身近な里山で木を集め、地元の職人によって建てられてきました。しかし最近は輸入素材が多くを占め、国内で木造に関わる人が激減しています。とくに職人の技術は、一度絶えてしまったら取返しがつきません。だからこそ、私は園舎づくりにおいても地域の協力を得て、土地の文化を守りたいと考えています。それは、園舎が地元に愛され、残り続ける力にもつながります。今後、保育園はますます〝選ばれる側〟になるといわれています。ただ自然素材を用いるだけではなく、どんな想いを込めるのか。これからの園舎には、その視点も問われていくのではないでしょうか。写真

上棟式をしました(群馬県富岡市 めぶきの森保育園)

地元の森林組合様の協力を頂き、群馬県産木材(杉・桧・唐松)を活用して建てました。また地域の職人さんの協力も頂くと共に、群馬県からも県産材活用推進の補助金を頂きました。

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