関西・大阪万博 視察
鉄・コンクリートの社会から、木材活用とリサイクルの世界へ
関西・大阪万博を視察してきました。事前の報道からは混雑や運営面への懸念も聞こえていましたが、実際に足を運んでみると印象は大きく異なりました。私が訪れた5月上旬、会場は想像以上の賑わいを見せており、むしろ「祝祭」としての万博本来の空気がしっかりと息づいていました。
心配していた入場時の混雑も思った以上にスムーズで、各国パビリオンの飲食も概ね10分程度の待ち時間で利用できました。全体として大きな混乱は見られず、運営は一定の成熟度に達していると感じられました。一方で、これまでの万博──つくば、愛知といった過去の体験と決定的に異なるのは、「スマートフォン前提のシステム」であることでした。チケット購入からパビリオン予約に至るまで、スマートフォンが不可欠であり、それを操作できないと現地での長い行列にならぶことを余儀なくされます。但し人気のパビリオンは予約困難のため結局は同じ事でした。(^^; さらに予約システムも操作方法も簡単とは言い難く、とりわけ高齢者にとっては高いハードルとなっている点は、今後の重要な運営の課題となるのではと感じました。
会場に足を踏み入れてまず圧倒されるのは、議論の的となっていた「大屋根リング」の存在です。実物は想像をはるかに超え、日本の伝統的木造建築のスケールと技術を現代的に再解釈した圧巻の構築物でした。その姿は、かつてローマで目にしたコロッセオの記憶を想起させるほどの象徴性と空間的迫力を備えており、円環という形態は、人類にとって根源的な「集う場」の象徴であり、その内側に生まれる空間は、個と集団、さらには国家をも包摂する包容力を持ち、このリングは単なる大屋根ではなく、「世界をつなぐ構造体」として機能しているように感じられました。
また今回の万博では、この大屋根リングにとどまらず、木造あるいは木質による建築が随所に見られる点が特筆していました。ウズベキスタン館、中国館、北欧館、住友館、そしてCLTを用いたチェコ館など、各パビリオンが自然素材の可能性を多角的に表現していました。さらに、映画監督の河瀬直美が手掛けた、廃校となった木造校舎を再利用したパビリオンは、単なる素材の再利用を超え、時間そのものを建築に織り込む試みとして印象深く感じました。
興味深かかったのは、日本館のファサードにおいて、前回のドバイ万博で使用された鉄骨や膜材が再利用されている点でした。建築資材が国境を越えて循環するこの事例は、万博という場が単なる一過性のイベントではなく、長期的な資源循環の実験場であることを示しています。さらに、多くのパビリオンが会期終了後に再利用を前提に設計されていることからも、これまでのスクラップ&ビルド型の価値観からの明確な転換が読み取れました。
19世紀、産業革命を背景に始まった万博は、鉄・コンクリート・ガラスといった素材の進化によって近代都市の発展を牽引してきました。その延長線上にある現在、脱炭素社会に向けた木材や自然素材の新技術が主役となりつつあり、もし万博の精神が「未来の提示」にあるのだとすれば、今回の大阪万博は、次の150年を方向づける重要な転換点として記憶されることになるでしょう。
建築という行為が、単なる形態の創出ではなく、社会や環境との関係性を再定義する営みであることを、改めて強く実感させられる視察でした。

日本の伝統構造である貫工法によって組み立てられています。良く見ると貫の接合部の作り方がゾーン(施工会社)によって3種類あり。柱脚(柱の足元)の納め方も違いました。
以下に、目に留まった木造・木質のパビリオンを紹介します。
(下記)住友館。流線型の木のデザインがひときは目を引きます。人気パビリオンのひとつです。建築的には国産杉のCLT板(直交集成板)を円形に並べた構造体が特徴で、会場内から集めた木材や資源を循環利用することを前提に設計されているとの説明。
パビリオン内では「植林体験」を実施し森や自然と向き合い、未来へ想いを馳せる大切さを感じ続けるきっかけを提案するとの事。

(下記)ウズベキスタン館。ギリシャ神殿を彷彿とさせる建築です。 大屋根リングから撮影しました。屋上には無数の木柱が見える。森のような屋上テラスには上ることができます。木造・木質のパビリオンの中でも、完成度の高い建築です。 建築設計事務所はドイツのアトリエ・ブリュックナー。

(下記)中国館。こちらは外観のみの見学でしたが、古代の建築をイメージさせる斬新なデザイン。建築設計は中国工程院院士・崔愷氏。中国館は“竹簡”をモチーフにした外観デザインとの事。唐詩宋詞や四書五経も刻まれたまさに「文化の書簡」。庭園の美学も取り入れた建築。












