toggle
2024-08-24

木造住宅耐震診断のすすめ 現場から

本日は石岡市内にて木造住宅の耐震診断(一般診断法)を行いました。建物は木造2階建て、1984年 (昭和59年) に建てられた築40年の物件です。いわゆる新耐震基準(昭和56年6月1日以降に建築確認申請が交付された建物)で設計された建物です。石岡市では、新耐震基準で設計された建物には耐震診断の補助対象外となります。

新耐震基準日以降の建物も要注意

さて、確認申請の図面と比較しながら調査を始めたところ、申請の平面図と実際の間取りが違っており、床面積も申請の面積よりも大きく、また建物の高さも申請図面よりも高いことが判明しました。つまり確認申請図書通りに建てられていませんでした。また、図面では耐力壁(筋交い)と記載のある壁を調べたところ、筋交が一ヵ所も入っておらづ、全て貫が通されていました。貫も有効ですが筋交いと比べて必要な壁量が多くなりますので、基本的に耐力壁の壁量が足りておらず、耐震強度の不足という結果になりました。またカスガイや羽子板ボルト等の金物も取りつけられていませんでした。なぜこのような事がおこったのか、その理由としては、当時は今と違って完了検査(工事完了後に行う法的な検査)が厳格化されていませんでした厳格化されたのは2007年(平成19年)のいわゆる姉歯耐震偽装事件以降で、それ以前は木造住宅などの小規模建築(4号建築)では、建築士による工事監理が行われていなかったり、完了検査を受けづに使用されるケースが多々あったようです。つまり1984年6月以降に確認申請を受けた建物であっても、建築基準法に適合していない建物が、数多く存在している可能性が高いという事が分かりました。

新耐震基準日以降の建物も耐震診断をお勧めします

一方で小屋裏等を確認すると、当時は手刻みにて加工が行われており、継手(梁と梁)や仕口(柱と梁)といった伝統的な木造技術は現在よりも高く、良質な材料(杉、ヒノキ、松)が適材適所に使われているなど、一般診断では反映されない主要構造部が丁寧に作られており、診断結果の数値以上の耐力を保有していると思われました。しかし、明らかに耐力壁が不足していることは否めません。将来を考えると早急に耐震補強が必要と考えます。私の所見としましては、現在のお住まいが新耐震基準の設計の建物であっても、検査済証を交付されていない特に2007年以前の住宅については、同様なケースがあると推測されますので、念のため耐震診断を受ける事をお勧め致します。

診断結果は0.08となり、大きな地震の際に倒壊する可能性が極めて高いとの判定になりました。
小屋裏:柱・梁の仕口は良質な材木で丁寧に作れれているが、羽子板ボルト等は付いていない。
関連記事